2012年11月10日
ベルリン中央駅の目と鼻の先に野生のウサギがすみ着いている。金網で囲まれた運河沿いの空き地の一角。朝夕通り掛かると、ときには四匹ほどが草をはみ、大きな後ろ足で歩き回る姿が見える。
三百四十万人が暮らす首都の真ん中で日常的に野生動物と出合えることにちょっと驚く。市のホームページによると、市内にはイノシシ、シカ、ビーバーなど五十三種の哺乳類がすみ、個体数は増加傾向にあるという。
自然保護団体に聞くと、街中で野生動物が増えたのは、市周辺部で開発が進んだため。大木が生い茂る市内の公園に猟師はいないし、えさのごみが豊富で居心地がいいらしい。
もっと驚くのは日本では準絶滅危惧種のオオタカのつがいが百組もいること。一九八〇年代から公園で営巣を始め、今ではアパート中庭の立ち木に巣をつくるケースも。「ふ化して最初の一カ月はひなの鳴き声がうるさいので、住民に説明して理解を求めている」と自然保護団体のメンバーは言う。
ある知人は自宅近くでウサギを狙って急降下するタカを見た。繁華街近くで、ウサギをくわえたキツネの目撃談もある。統一通貨ユーロの生き残りをかけて欧州首脳が熾烈(しれつ)な外交を繰り広げるベルリンで、動物たちもまた生存のドラマを演じている。 (宮本隆彦)