2017年05月26日
坂道が多く、景色のいい撮影地点が多いサンフランシスコ。iPhone(アイフォーン)で写真を撮っていたら、黒人男性が「一人旅の途中で電話をなくした。ちょっと貸してもらえないかな」と言ってきた。
「あやしい」。私はそう思いながら、2年前のことを思い出した。ブラジル・サンパウロの空港でのこと。男性が「ベネズエラに帰る飛行機がキャンセルになった。家に電話をしたいから、貸してくれないか」と話し掛けてきた。
南米では盗難事件が多いと聞いていた。渡したら最後、そのまま走り去られるのではないかと思い、断った。男性は「僕はどうしたらいいんだ」とその場で泣きだした。
私こそ、どうしたらよかったのだろう? あの時、飛行機の中で考えた結論は「次は貸してあげよう」。私用のだって盗まれたら困るが、1本の電話で解決できる問題があるのかも。
警戒しながら差し出した私の携帯電話を、黒人男性は慣れない手つきで使った。聞いたことのない言語で話をした後、彼が撮ってくれた私の写真は、心なしか、すがすがしい表情をしていた。 (北島忠輔)