2020年02月19日
2011年に中東で広がった「アラブの春」の先駆けとなり、民主化を実現したチュニジア。9月の大統領選で訪れると、革命で倒したはずのベンアリ独裁政権時を懐かしむ声を聞いた。経済回復が遅れ、汚職が横行する政治への不信の表れだが、そればかりではないようだ。
「人びとが怠惰になった。民主主義を誤解している」。非暴力の政治対話を訴えて民主化を促し、15年のノーベル平和賞に選ばれた人権擁護連盟の前代表ベンムーサさん(67)は首都チュニスで、困惑気味に話した。
言論の自由や大衆運動が保障され、チュニジアでは街頭デモが頻発。「労働者が休暇やボーナスを殊更に要求する。鉄道が通ると、仕事が減る運送業者が動員してデモが起きた」。特定の政治家や団体が自身の利益追求のために利用する事例もあるという。「民主主義には責任を果たすことも重要だ」
独裁政権に組織を解体されるなどの弾圧を受けてきた連盟を長年率いたベンムーサさん。「民主主義が根付くには長い道のりが必要だ。時間もかかる」。いまだ生みの苦しみにいる母国に厳しくも温かい目を注いだ。 (奥田哲平)