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ロンドン 「不敬」じゃなく「敬服」

2023年01月25日

 「エンペラーがバス? 信じられない。何で日本は戦わないんだ?」。知人の米国人が意外そうにまくしたてた。先月のエリザベス女王の国葬では、500人を超す海外要人の移動に際し、英政府の求めに応じて天皇、皇后両陛下も他国の王族とともに乗り合いのバスに乗車された。

 知人は不敬ではないかとの趣旨で聞いてきたが、むしろ英国では好意的に受け止められていたと感じる。英国人の知人は「バイデン米大統領と違って特別扱いを求めず、両陛下の謙虚な姿勢がうかがえて敬服した」と話した。

 バイデン氏はおなじみの防弾仕様の専用車両「ビースト」を今回も空輸し、大々的な警備でロンドン市内を走行した。移動に時間がかかって国葬に遅刻し、厳粛な式の進行を妨げさせないために入り口で立って待たされる姿が、一部メディアで、やや皮肉まじりに報じられた。

 英国では元人気サッカー選手のデービッド・ベッカムさんが弔問の列に13時間並んだことも「分別があり謙虚だ」と株を上げた。地位や権力、人気を持つ人の行動が、この国では国民から常に厳しい目で見られていると改めて感じた。 (加藤美喜)