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ワシントン 最前線へもお先に?

2013年03月14日

 10階で乗ったエレベーターが1階に到着した。ドアの前に立っていた男性が一番奥の女性に「お先にどうぞ」と通り道を空ける。女性は「サンキュー」とほほ笑み、最初に出ていく。「欧米か!」とツッコミたくなるが、ここは米国の首都だ。そうはいかない。

 この男性が特別にキザなわけではない。紳士の作法なのだ。ビルに出入りする際も、男性のすぐ後に女性が続いている場合、ドアを開けて先を譲る。女性の側も慣れた様子で、礼を言わない淑女も珍しくない。

 女性に気を使わない男への社会の視線は厳しい。スーパーで妻に重いカートや買い物袋を持たせようものなら、最近とみに欧米化の進んだ娘から「みっともないからパパが持って」としかられる。

 そんな国で先日、女性兵士にも最前線の戦闘任務の門戸を開くことが決まった。戦闘部隊への女性の配属を禁じた米軍規則は性差別だとして、女性兵が廃止を求めていた。オバマ大統領は「公正と平等という理想を実現する新たな一歩だ」と軍の決定を称賛した。

 女性優先と性差別解消を両方とも徹底するのは、極端に流れがちなこの国らしい。生半可な米国流を身に付けた外国人が間違って最前線の男女混成部隊に放り込まれたら、つい言ってしまいそうだ。「お先にどうぞ・・・」 (竹内洋一)