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ウガンダ・グル アフリカで見た高貴

2018年12月05日

 アフリカはどうだったと聞かれ、同じ答えを返す。「85パーセントはムカつく。でも残りの魅力は計り知れない」。交渉には忍耐と多少の強引さが必要で、仕事としては苦労した。

 しかし、ウガンダのグルで、地方で暮らす人々の泰然自若としたたたずまいと子どもたちの目の美しさには、圧倒された。

 彼らは土壁の家に暮らし、炭で調理し、共同水場を使う。当然、先進国に比べ物質的豊かさは劣る。だが、貧しくとも彼らの背筋は天を指すように真っすぐ伸び、決して走らなかった。

 大きなカゴを頭に乗せて授乳しながら歩く母親。赤土の道で、真っ白なロングスカートを翻す若い女性。子どもはニコニコしながら近づいてきて、黙って腰に抱きついてくる。

 日常生活を送る姿から、身体能力の高さと精神的な余裕、情愛の深さがにじみ出ていて、高貴にさえ感じた。そして、「ああ、ここは人類発祥の地なんだ」との思いに至った。

 アフリカで生まれたヒトが大陸を移動し、全世界に行き渡る間、「進化」の名の下に、大事な何かを失ったのではないか。再びアフリカに赴き、それを確かめたい。 (沢田千秋)