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ロンドン 鋭い視線の矛先は・・・

2019年03月26日

 1月上旬、ロンドンの日本大使館前で、反捕鯨団体シー・シェパードのメンバー10人が「クジラを殺すな」と声を上げていた。クジラ資源管理の国際捕鯨委員会(IWC)から、日本が脱退することへの抗議だった。

 取材しようと近づくと、鋭い視線が私に集まる。「日本人だからかな」。そう思いつつ、まず中年女性に声をかけたが、彼女はぶすっとして無言。次に若い女性にあいさつで手を差し出すと、「あなたとは握手できない」とぴしゃりと言われた。

 戸惑っていると、女性2人は私のダウンジャケットのファー部分をつかんで「これがどのように作られるか知ってる?」と語気を強めた。日本の街でもよく見掛けるダウンだが、欧米の動物愛護団体からは、ファーを作るためにコヨーテを残酷に殺しているとの批判がある。

 メンバーの初老男性が割って入るまで、女性らによる詰問を受け続けた。男性は反捕鯨の主張を繰り返しつつ、私を送り出すとき言った。「日本人は大好きだけど、商業捕鯨のために日本政府が話し合いの場からも抜けたのは許せない」。気遣いとは裏腹に、やはり目は笑っていなかった。 (藤沢有哉)