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パリ 鳴り続けるサイレン

2019年04月12日

 フランス政府への抗議行動「黄色いベスト運動」など昨年末から数カ月たっても落ち着かないパリ。ある日の夕方、国会議事堂に近いセーヌ川沿いを歩いていると、10台以上の警察車両がサイレンを鳴らしたまま止まっていた。前後には一般車両も行列を作っている。

 テロか、事故か。周りの観光客も不安そうに見守っている。近くに立っていた警官に「事故でもあったんですか?」と聞くと、けげんな顔をされた。「あんなに警察車両が集まって、サイレンを鳴らしているけど・・・」と言うと、相手は急に笑いだした。「単なる渋滞さ」

 一日の仕事を終えたパトカーが渋滞に出くわして、少しでも早く警察署に帰ろうとサイレンを鳴らしているらしい。警官は「事故か、だってさ」と同僚とゲラゲラ笑っていた。

 実はパリの警察車両は、基本的に緊急出動時もサイレンを鳴らしっぱなしにしない。交通の状況次第だが、交差点などで注意喚起のために少し鳴らす程度だ。毎週末デモ警戒のため出動し、デモとの衝突で負傷者も相次ぐ警官ら。サイレンが「たまにはゆっくりしたい」との叫びに聞こえた。 (竹田佳彦)