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ロンドン 褒められるほど複雑

2019年06月03日

 「日本は素晴らしい国だな」

 英国の欧州連合(EU)離脱問題に絡んだデモをロンドンで取材していると、こんなふうに持ち上げられ、握手を求められることが少なくない。声の主は、EUから即時の離脱を願う強硬離脱派の市民だ。

 強硬離脱派は、EUが加盟国に課すルールが英国の「主権」を侵害し、移動の自由により入国する移民たちが「英国民の仕事を奪っている」と主張する。地方の労働者階級に多く、年齢層も比較的高いとされるが、取材をしていると、富裕層と低所得者層、都市と地方の格差などが、EUや英政府の政策への不満に結び付いていると感じる。

 彼らが日本に好感を抱く理由として、よく挙げるのは「移民の少なさ」だが、同時によく耳にするのが「愛国心の強さ」だ。「日本はどんな式典の時も国旗を掲げるんだろ。国を愛するのはいいことだ」と、興奮気味に話す男性もいた。

 情報を正しく把握していない面もあるが、彼らはどこか、今の日本の風潮を感じ取っているのだと思う。「日本がうらやましいよ」と、彼らに言われるたび、複雑な気持ちになる。 (藤沢有哉)