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香港 3カ月…慣れと備え

2019年12月13日

 「そのガスマスクは役に立たない。こっちを着けて」。香港のデモを取材していると、ガスマスクやゴーグルの入った段ボールを抱えた若者グループに話し掛けられた。警察が使う催涙ガスに備えてガスマスクなどを用意していたが、たしかに彼らが持っているのと比べると、自分のは小型で貧相にみえる。

 若者らは代金の受け取りをかたくなに拒み、マスクのフィルター装着まで手伝ってくれた。「気を付けて」と言い残し、ほかのデモ参加者や記者に装備を配るために足早に去っていった。

 デモでは、看護師らの救護班や、逮捕された際に法律支援を行う弁護士、水や食事、雨具を配る高齢者ら、さまざまな人たちを見掛ける。開始から既に約3カ月がたち、参加者や支援者にも慣れと備えがあるようだ。

 男性にもらったマスクやゴーグルはその直後に活躍した。それでも汗でずれたマスクやゴーグルの隙間から催涙ガスが入り、涙と鼻水が止まらない。洗い流すための水が素早く配られ、手際のよさに感心した。

 ただ、かばんや衣服についたガスはその後も残る。しばらくの間、かばんを背負うたびにくしゃみが出た。 (中沢穣)