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ギリシャ・レスボス島 軟らかいタコに乾杯

2020年07月03日

 魚介類を使った料理が生活に根差している地中海沿岸部。先日、トルコと海峡を隔てて向き合うギリシャ東部レスボス島を訪れた。仕事の合間に入ったレストランで出たのが、タコの赤ワイン煮込みだ。家庭でも作られる人気メニューらしい。

 皿に盛られて出てきた足は軟らかく煮られ、フォークの側面ですんなりと切れる。風味こそ違うが、和食の「タコの桜煮」を思い出した。日本では箸で切れるほど軟らかくするため、大根でたたくのが定番だ。洗濯機を使うところもあると聞く。

 「どうやって軟らかくするか知ってるかい?」。地元の男性(52)が、島のやり方を教えてくれた。「タコがとれたら、地面に数10回たたきつけた後、何分間も振り回すんだ」。桜煮と同じ発想だと言うと、一気に打ち解けて地酒ウゾで乾杯した。

 広い島しょ部を抱え、海運業も盛んなギリシャ。島北部の小漁村では「貨物船に乗っていたとき、横浜に行ったことがあるぞ」と話す元船乗りとも知り合った。タコの下処理方法しかり。東京五輪の聖火が日本に渡ったが、想像以上に日本とギリシャは近かった。 (竹田佳彦)