2020年09月03日
英国の死者数が欧州最多になるなんて、思いもしなかった。ロックダウンと呼ばれる封鎖は他国より長引いている。かれこれ3カ月。
対面取材はことごとく断られたが、外国人記者協会の身分証を携帯し、写真撮影などに出掛けていた。ゴーストタウン化した街で、たまに擦れ違う人が放つ洗剤の臭いは、人生で最も強烈だった。鼻が慣れていなかったのだろう。2メートル離れていても、むせ返るようだった。
人種差別に遭っていないか、よく心配される。答えはノー。だが、公園をランニング中など、数十人に1人、私だけを極端に避ける人物がいる。そんな時、「この人はわざとなのか」と考えながら、相手の顔をじっと見てしまう。そうすると、必ず、相手が先に目をそらす。
困っているのは発声だ。英語は毎日話しているが、日本語は、せいぜい1週間に1時間。最近、日本語で電話をしていると、声が出しづらく、声帯付近に軽い痛みを感じる。英語と日本語では口の使い方が違うらしく、日本語用の筋肉が弱っているらしい。日本の家族なり、友人なり、もっとマメに連絡しなくては。 (沢田千秋)