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北京 自慢話から不正発覚

2020年09月17日

 ある若手男性タレントを以前から知っていたかどうか、北京に住む身近な中国人10人に聞いた。知っていたのは1人だけ。その女性は「彼が出演したテレビ番組を見ていた人以外は知らないと思う」と話す。

 そんな売れないタレント仝卓(とうたく)氏が5月下旬、突然有名になった。ネット上で「大学入試で身分を偽った」と自ら明かし、さらに自分は共産党員だと自慢したためだ。注目を集めたかったのだろうが、ネット上で大炎上し、当局が調査に乗り出した。

 報道によると、仝氏は高校3年時に大学受験に失敗したが、志望大学は現役生しか受けられないため、高校3年に編入して翌年に再受験した。同時期に入党も果たしていた。山西省臨汾市の人民代表大会常務委員会副秘書長だった父が裏で動き、その委託を受けた地方政府幹部や学校関係者が、編入や入党などで不正に便宜を図っていた。

 当局の対応は厳しい。これまでに父を含む21人が処分され、仝氏の大学卒業資格が取り消された。だが、仝氏の不正は間抜けな自爆がなければ発覚しなかったはず。同じような不正が他にも埋もれているのではとの疑いも生んだ。 (中沢穣)