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カイロ 空に「天国の扉」が開く

2021年01月18日

 雨が降るとき、空に天国への扉が開く-。すてきな話を友人から聞いた。カイロでは雨は年数回で、それも10分ほど激しく降ってやむのが普通。そんな雨が降るとき、人々は手を伸ばして雨粒に触れ、開いた天国の扉に向かい願い事をするという。

 11月下旬の昼下がり、珍しく空が曇り始め、雨がパラパラ降り始めた。「ついに扉が開く!」と1人で興奮し、ベランダから雨粒に触れようとすると、次第に豪雨となり、ついにはひょうが降りだす始末。屋外では悲鳴を上げて逃げる人もいた。

 雨の少ない国で、豪雨時に露呈するのが排水設備の悪さだ。エジプトも例外ではなく、雨が降りだした途端に道は湖のようになり、地下駐車場に勢いよく水が流れ込んだ。支局の助手に「電柱に近づいただけで感電するから気を付けて」と言われたが、確認する勇気もなかった。

 あの日、「天国の扉」は見事に全開した。あまりの豪雨に願い事も忘れ、気付いたら雨はやみ、いつもの太陽が照り始めていた。あれから数日、道路の一部はまだ沼地のようだ。「次こそ願い事を」と思うのだが、あの全開っぷりに少しひるんでいる自分もいる。 (蜘手美鶴)