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ワシントン 格差目立つ厳戒首都

2021年03月05日

 バイデン大統領就任の取材で訪れた首都ワシントンは、事前に伝えられていた通りの厳戒態勢。連邦議事堂はフェンスで囲われ、中心街も事実上封鎖。大半の住民は家に閉じこもったままだった。

 それだけに、目についたのはホームレスの姿。ホテルの前やバス停のベンチ、夜は氷点下になる路上でたたずんでいる。

 「それ、残してないのか」。ある黒人男性から話し掛けられたのは、屋外で昼食を食べ終え、使い捨て容器のふたを閉じてごみ箱に入れようとした時だった。物陰からふっと現れた長身にどきりとしたが、「ごめんなさい、全部食べて何も入ってないよ」と答える胸の痛みの方が強かった。捨てるのはもったいないと、最後の方は無理して口に入れていたのに。

 格差拡大が叫ばれて久しいこの国では、IT大手アマゾン創業者ら上位3人の富が、下位50%の約1億6000万人分をしのぐとする試算さえある。あの黒人男性に出会ったのは、バイデン氏が「すべての国民の大統領になる」と宣言した就任演説の日だった。彼の耳に、その言葉はどう響いたのだろう。 (杉藤貴浩)