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ロンドン ミスマッチな英雄像?

2021年03月22日

 ロンドンの観光名所の1つが、中心部にあるトラファルガー広場だ。英海軍がフランス・スペインの連合艦隊を破った海戦の名前を冠し、19世紀に整備された。観光サイトによると、年約1500万人が訪れる。

 敷地には大きな4つの台座が鎮座し、うち3つには19世紀当時の国王らの彫像が据えられている。だが、北西側の「第四の台座」は趣が違う。1841年に完成したが、彫像制作が資金難で頓挫。「主(あるじ)」がいない状態が約150年続いた後、現代芸術作品の展示場所になった。

 近ごろ、この台座に、2月上旬に亡くなった退役軍人の彫像を設置するよう一部が求めている。賛同を呼び掛ける男性(67)は、新型コロナウイルス禍で医療従事者への多額の寄付金を集めたトム・ムーアさんは「世界的な英雄だ」として、「国内外の大勢が集まる場所で功績をたたえたい」と語る。

 広場に立ち寄り、ムーアさんの彫像が立つ光景を想像した。馬にまたがるなどした200年ほど前の国王、軍人の中に、勲章を着けたジャケット姿のムーアさん。英国への功績は劣らないかもしれないが、場の雰囲気からは浮いていた。 (藤沢有哉)