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バンコク 金物鳴らし母国憂う

2021年03月29日

 カン、カン、カン―。鍋やアルミ皿を打ち鳴らす金属音が夜空に一斉に響く。バンコクにあるミャンマー大使館前の街頭デモ。「家族もいる。もちろん、今すぐに帰りたい…」。移民労働者の男性(33)は居ても立ってもいられない様子だった。

 金物を鳴らし「悪霊退散」を願う抗議は、ミャンマーのクーデター直後に始まり、国外でも。「新型コロナウイルスや仕事もあるので、今は応援しかできない」。悔しさを浮かべる男性のような労働者は多い。

 17年前に母国を離れ、建設現場で休みなく働き、3年ほど帰郷していない。熱烈なアウン・サン・スー・チーさん支持者ではないというが、昨年11月の選挙では在外投票でスー・チーさんの政党に投じた。「それが踏みにじられた」

 教えてくれたネットの映像からは、ほぼ時を同じくして、母国の夜空に響く抗議の合奏が聞こえてきた。英語や日本語で書かれた、悲痛なメッセージも日々あふれる。「昨年はコロナ患者をカウントしたが、まさか、拘束者や死傷者を数える日が来るとは」「世界が懸念を表明する間にも、人々が死に続けている」…。 (岩崎健太朗)