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韓国・西帰浦 悲劇の歴史 伝えたい

2021年09月24日

 青い海を望む畑地に、かまぼこのようなドーム形の建造物が点在している。韓国・済州島(チェジュド)南部の西帰浦(ソグィポ)市。ここにはかつて旧日本海軍の航空基地が置かれていた。日中戦争では南京や上海に出撃し、太平洋戦争でも本土決戦に備える主要拠点として使われた。

 ドーム形の建造物は、敵から軍用機を守る掩体壕(えんたいごう)。19基が現存し、通信施設だったという建物の一部も残っている。掩体壕の一つには、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の模型が置かれ、鉄製の骨組みには訪問者がメッセージを書いた無数のリボンが結んである。その一つを読んでみると「犠牲になった方の鎮魂と平和を願う」とあった。

 韓国では近年、日帝時代や戦争などの痕跡をたどる「ダークツーリズム」が注目されている。広大な基地跡を見て回っている間にも、数組の韓国人家族らが見学に訪れていた。

 子どもたちにも理解しやすいように漫画の案内板があり、島民を強制徴用して整備されたとの説明もあった。反日感情につながらないかと心配にはなるが、悲劇を繰り返さないためにも歴史を伝えていくことは大切だと思う。 (中村彰宏)