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北京 なまり見下さないで

2022年01月27日

 中国の若い世代には、北京語を基にした標準中国語「普通語」を流ちょうに話す人が増えた。一方、中国では各地の方言が多種多様で、年配の地方出身者の中には、普通語の発音が苦手で、円滑な会話が難しいケースもある。

 先日、北京の商業施設のエレベーターの中で、若者2人が言葉のなまりについて雑談をしていた。1人が「四川省や広東省のなまりは、まるで外国人の話す中国語のようだ」と話すと、もう1人が「農村から来ている人の普通語は、聞き取れないんだよな」と、地方出身者を小ばかにしたように語った。

 北京では、多くの地方出身者や農村からの出稼ぎ労働者が働く。技能がなく普通語が苦手な労働者は、条件の悪い仕事に就きがちだ。昔から北京で暮らす人たちの中には、エレベーターの2人のように、普通語を流ちょうに話せない地方出身者を「田舎者」と見下す人もいる。

 中国政府は全国的に普通語教育を推し進め、各地の方言や少数民族の言語を話す人は減少傾向にあるといわれる。地方の豊かな文化を育んできた言葉をばかにするような感覚には、反感を覚える。 (坪井千隼)