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バンコク 多様性巡る立ち位置

2022年10月21日

 休日に訪れた、バンコク郊外の海鮮食堂。注文をとりに来た店員さんは、恐らく女性。だが、出生時の性は男性だったと思われる。エビの殻の外し方に戸惑っていると、丁寧に指導してくれた。手ふきの紙ナプキンが切れると、すかさず補充。サービス精神満点の接客だった。

 タイで同性婚を認める法案の審議が始まった。LGBTQ(性的少数者)の人たちは、当たり前に街中に溶け込み、寛容な社会の土壌があるといわれている。ただ、知人からは「それは表向き。職業によっては明確に線引きされ、根強い差別意識も残る」との声も聞く。

 法案はこれまでも議会の審議に上ったが、いまだ世に出ていない。今回も、政府案と野党案が対立する。政府の「市民パートナーシップ」法案は、同性カップルに異性夫婦と同等の権利を与えるとされるが、権利団体などは「すべてが平等にならず、差別を残す」と反発する。

 現状よりも前進する政府案を支持する人もいるだけに、何が正解かはわからない。ただ、当地に暮らしていると、幅広い社会の分野に、それぞれの立ち位置があることを実感できる場面は多い。 (岩崎健太朗)