2022年12月06日

　すすで真っ黒になった遺体の顔をぬぐうと、いつも礼拝に来ていた男性だったという。今月中旬、カイロ市内の教会で４１人が亡くなる火災が起きた。翌日現場を訪れると、教会の管理人ヨーセフさん（４８）が、すすまみれになった手のひらを広げ、当時の様子を語った。

　教会は日曜日の礼拝の最中だった。４階建てのビルの３階から出火し、煙は礼拝所のある４階に充満。出口は煙が吹き上げてきた階段のみで、多くが逃げ場を失って煙に巻かれた。

　現場を見て驚いたのは、検証もほぼないまま修復工事が始まっていたことだ。数１０人の作業員ががれきを撤去し、焦げた内装の修理に取りかかっていた。教会は路地が入り組む貧困地区に位置し、火災後、政府はいち早く教会の再建を表明し、住民に寄り添う姿勢を見せていた。

　火災現場において現場検証は必須に思える。原因が究明されなければ、また同じことが起きかねない。今回の出火元は１６台あった空調の１台からだったと聞く。なぜ火が上がり、どうして多くが逃げ遅れたのか。教会再建よりも優先すべきことがあるように思えてならない。　（蜘手美鶴）