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ロンドン ストライキに耐える

2022年12月20日

 「次の駅、止まりません」。チューブ(地下鉄)のアナウンスが突然告げた。「え、止まらないの?」。乗客たちが乗り換えのために慌てて降りていく。最近は日常茶飯事の光景だ。

 英国は今、交通機関の人手不足やストライキで頻繁に運休や路線変更が起き、通勤も人と会うのもままならない。バスも時々「ここで終了です」と言って急に運行が止まる。路上に放り出されて仕方なく歩くこともしばしばだ。クリスマス前後もストライキが予告され、家族の帰省にも影響を与えている。

 記録的なインフレで、賃上げのストライキに踏み切る業界は郵便や看護師などにも拡大。せっかく新型コロナウイルスの行動規制がなくなったというのに、各種ストライキがまた社会経済活動を阻害している。

 政府の効果的な対策は見えてこない。公共交通機関を普段使わないであろう政治家たちには、切実さは所詮(しょせん)人ごとなのだろうか。あきらめムードの市民も多い。少ない本数で当てにならないチューブやバスにきちんと乗れるたび、ほっと胸をなで下ろす日々。日本の満員電車と変わらないなと苦笑しながら、我慢の日が続く。 (加藤美喜)