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パリ ストでの思わぬ光明

2023年06月06日

 パリではこのところ、フランス政府が発表した年金制度改革案に反対するストライキが毎週のように起きている。先日は長女が通う公立小学校の給食担当職員らがストに入ったため、児童らには昼休みにいったん下校し、自宅で昼食を取ってから再登校することが求められた。

 公共交通機関のストでテレワーク中の私が体調不良の妻に代わって迎えに行くと、長女から級友の一人と一緒に食べてもいいかと頼まれた。彼女のひとり親の保護者は出勤中で、自宅で独りぼっちで食べることになるのがかわいそうだからという。「それならマクドナルドにでも行こうか」と話していると、横で聞いていた別の級友の母親が「ファストフードは体に良くないから、うちに来ないか。あなたも一緒に」と誘ってくれた。

 イタリア出身の彼女は同じ境遇の児童を他にも誘っていて、計8人分のパスタを手早くゆでて2種のソースに絡めて出してくれた。「ストが続くと不便なことも多いけど、こうやってポジティブな機会に変えてしまえばいいのよ」。にぎやかに食卓を囲む子どもらを横目にこう話した彼女に、人生の楽しみ方を学んだ気がした。 (谷悠己)