2022年12月20日

　モスクワ郊外のクビンカ市では毎年夏、ロシアの国際軍事展が開かれる。今年は戦闘機やミサイルを見学しながら、ウクライナで続く「特別軍事作戦」を思いだしていた。

　案内してくれる軍人はみな親切だが、私もつい水を差すようなことを言ってしまう。落下傘部隊のブースで「たくさんの同僚が死んだそうですね」と言うと、案内人の１人は目を伏せ、黙りこくった。もう１人は「戦争に犠牲は付き物」と自らを鼓舞するように言った。

　別のブースで案内してくれた軍人とは２人だけになった別れ際、「ウクライナでの軍事作戦をどう思う」と直球で尋ねた。「挑発的な質問だ」と彼は初めはちゃかしたが、問い詰めると答えがあった。

　「あなたの言いたいことはわかる。でも軍人ならば、大統領の命令に従うしかない。こちらの胸中を察してほしい」

　彼はウクライナの戦地の惨状を知っているのだろう。国営テレビの情報に頼る市民と違って、出征した同僚から話を聞いているはずだから。軍人という組織の「駒」たちの本音は知るべくもないが、軍事作戦への見方は１つではない。　（小柳悠志）