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ロンドン 女王が愛した白い花

2023年01月06日

 エリザベス女王の逝去が英メディアで一斉に流れたのは、今月8日の午後6時半ごろだった。信じたくない、と心から思った。頭が真っ白になった。

 英国だけでなく、世界中の敬愛を集めた唯一無二の存在だった。生涯をかけて貫いた国民への献身を思い、涙が出た。まだまだ元気でいてほしかった。

 ロンドンのバッキンガム宮殿前には連日、大量の花が手向けられた。訪れると、バラやヒマワリ、ユリなどの花束がところ狭しと並んでいた。それらを見てふと、女王の好きな花は何だろうと思った。調べると「リリー・オブ・ザ・バレー」を好んでいたと知った。谷間のユリ。スズランのことだ。

 スズランは1953年の女王の戴冠式のブーケにもあしらわれた。野に咲く純白の小さな花。花言葉は「幸せの再訪」「優しさ」「純粋」そして「謙虚さ」。威厳と華やかさの一方で、このかれんな花を愛した女王にますます敬愛の念を抱いた。

 以来、生花店の前を通るたびスズランを探している。なかなかお目にかかれないのだが、それもまた、「女王様」らしいと思って、気長に出合いを待っている。 (加藤美喜)