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パリ 「花の都」の実情は…

2023年02月22日

 パリ市内の中学校に通う長男の同級生が頻繁に松葉づえ姿になる。昼休みに遊んでいる中庭が土ではなくコンクリートなので、転ぶとすぐに骨折してしまうようだ。治ってもまた骨折してしまった生徒も複数いる。

 先日、学校帰りの長男と松葉づえの級友と一緒に、地下鉄で移動する機会があった。乗った駅にも降りた駅にもエスカレーターとエレベーターは未設置。級友はつえを1段ごとにかけながら器用に階段を上り下りしたが、踏み外さないかとハラハラしながら見守った。教科書やノートがつまった重いリュックは持ってあげたが、普段は背負いながら移動していたという。

 パリの地下鉄バリアフリー化は極めて遅れており、2020年の市長選でも争点の1つになった。当時の指標によると、車いす対応の駅はわずか3%。24年に控える夏季パラリンピック時には9%へ上昇するというが、路線拡大により新設駅が増えるためで、既存駅の改修が大幅に進むという話は聞かない。いずれの駅も老朽化しており設置が困難なのは理解できるが、世界のパラアスリートらが「花の都」の実情に失望しないか、少し心配だ。 (谷悠己)