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仏オーリヤック 避難民家庭の「悩み」

2023年05月25日

 「受け入れてくれたフランスには感謝している。でも、いつまで残るべきかは悩ましい」

 ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから仏中央部の小都市オーリヤックへ避難しているナタリア・コロロバさん(43)が、ため息をついた。支援者らの尽力で仕事も住居も見つかり、生活は落ち着いている。悩みの種は、2人の娘たちが在仏生活で感じている満足度の差だという。

 中学3年の長女マーガリータさん(14)は仏人の親友ができ、語学レベルがめきめきと上達。興味を持つ建築の勉強を深めるためにもフランスに残ることを希望している。一方、小学5年の次女レギナさん(11)は現地の友人がなかなかできない。学校では別の避難民家庭の子どもたちとばかり一緒に過ごす日々で、「早く帰国して元の学校へ通いたい」と話している。

 自身もボランティアとして後から来た同胞を助けているナタリアさんによると、このような家庭内の温度差は他の避難民家庭でも生じているそうだ。「早期に休戦して帰国できれば問題は解決するけど、今はそんな展望は持てないから」。そう話すナタリアさんのため息が一層深くなった。 (谷悠己)