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ロンドン 今や「BYOP」の時代

2023年06月09日

 当地でホームパーティーに招かれると、案内に「BYOB」と書かれていることが多い。Bring your own bottle(飲み物は各自持参で)という意味だが、最近、これをもじった「BYOP」という言葉を聞いた。

 最後のPはpainkiller(痛み止め)のこと。英国の国家医療制度(NHS)が危機に瀕(ひん)している現状を取材する中で、虫垂炎で救急外来に駆け込んだ英紙記者のジョサイアさん(29)から「今やもう、BYOPの時代だよ」と聞かされた。

 英国ではNHSの予算不足で看護師や救急隊員の労働環境がどんどん悪化し、しわ寄せは患者に来ている。ロンドンでも医療関係者のストが続き、救急車を呼んでも命にかかわる病気以外はまず来てくれない。有事は救急車ではなく、タクシーか知人の車で病院へという発想が主流だ。その上、救急外来は超満員で、立ったまま何時間も放置されることが常態化している。

 救急医療を頼れない現状はとても怖く、無事に過ごせるのを天に祈るしかない。薬局で鎮痛薬を探しながら、自力でどうするか普段から考えておかねばと思案している。 (加藤美喜)