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ソウル 心安らぐおせっかい

2023年06月08日

 とうとう中央分離帯ができたとは…。社会の移り変わりが目まぐるしい韓国では、わずか4年半ぶりの赴任でも、さまざまな変化が目についた。

 ソウルの事務所近くの車道ではかつて、酔客の無理やり横断が目立っていた。交通安全のため、分離帯設置は妥当な措置だろう。「爆弾酒」に使うビールも新しくなった。「前よりおいしくなったぞ」と友人は自慢したが、結局、一気飲みさせられるので味の違いは分からなかった。

 一方で、変わらないものには心が安らぐ。テナガダコの刺し身のごま油あえと、タコの入った海鮮鍋は、当地に来たら食べたかった好物の1つ。だいぶ値段は上がってしまったが、安定の味に舌鼓を打った。

 一緒にゆでたエビは「ミソ」までおいしい。一尾を食べてさあ二尾目も、と思ったところ、店員が殻をむき始めてくれた。「この親切さも懐かしい」と感謝したのもつかの間、店員は私にほほ笑み、なんとミソの入ったエビの頭を持ち去ってしまった。そうだ、親切だけどおせっかいでもあった−。驚きながら韓国を思い出す日々は、しばらく続く予感がしている。 (上野実輝彦)