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マニラ 家に帰るまでが遠足

2023年06月16日

 旅先ではなるべく、市民の「足」を使うよう心がけている。10日間のフィリピン滞在中、まず乗ってみたかったのが、乗り合いバス「ジプニー」だ。駐留米軍払い下げのジープ型の車を改造したのが始まりとされる。

 マニラ市内で取材先を移動する際、ちょうどよい路線のジプニーを見つけた。ガイドブックには「スリが出没」と書かれていたため最初は恐る恐る乗車。荷物を前でギュッと抱え、周囲に気を配った。天井が低く、ぎゅうぎゅう詰めの車内。吹き抜けの窓から入り込む風が心地よい。後部に座ったところ、近くの客がバケツリレーのように運賃を運転手に渡してくれた。心配は杞憂(きゆう)に終わった。

 メータータクシーも頻繁に利用した。渋滞がひどい時間帯はメーター料金に50~100ペソを上乗せされることもあったが、法外だとは感じなかった。

 ところが、帰国のため空港へ向かう最後のタクシーでぼったくりに遭ってしまった。明らかに100ペソ以下の距離にもかかわらず、1000ペソを要求された。ちゃんとメーターを使うようくぎを刺せば良かったと後悔。懐かしい言葉が脳裏をよぎる。家に帰るまでが遠足。 (藤川大樹)