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カラシン

カラシン タイ 「恐竜王国」僧侶が発端

展示室への入り口で来館者を出迎える肉食恐竜「シャモティラヌス」のモニュメント

展示室への入り口で来館者を出迎える肉食恐竜「シャモティラヌス」のモニュメント

 巨大な口、鋭い目。大地を踏みしめる両足は、いかにも強靱(きょうじん)そう。タイ東北部で化石が見つかった肉食恐竜「シャモティラヌス」のモニュメントだ。

 東北部の中心近くの丘陵地に立つシリントーン博物館で、展示室に入る際、出迎えてくれた。タイではティラノサウルスの祖先の可能性があると考えられており、人々の誇りになっている。同博物館が位置するカラシン県は、タイ国内最大規模の恐竜化石の発掘現場として知られる地だ。

 国王ラーマ10世の妹シリントーン王女の名を冠する同博物館は、タイ国内で発見された恐竜化石の標本を展示するほか、地球の誕生から人類の進化までの歴史を総延長800メートルにわたって紹介している。この地域を観光で訪れる日本人は少ないが、同博物館は日本の福井県立恐竜博物館(勝山市)と2014年に姉妹提携を結び、発掘調査などで協力している。タイで見つかる恐竜には日本と共通する種類もあり、太古の大陸では、両国は同じ地域にあったことを示すという。

 展示のメインは、1億3000万年前の白亜紀に生息した首の長い草食恐竜「プイウェンゴサウルス」の複製化石だ。全長は15~20メートルにもなる。カラシンでは博物館から少し離れた丘陵にあるサッカワン寺院の境内から、頭部と首の一部を除く全身の骨格が、ほぼ完全な形で見つかった。

タイ国内で発見された恐竜の全身化石(複製)=いずれもタイ・カラシンのシリントーン博物館で

タイ国内で発見された恐竜の全身化石(複製)=いずれもタイ・カラシンのシリントーン博物館で

 きっかけは1970年、同寺院のハー和尚(94)が巨大な骨のようなものを見つけたことに始まる。発見当時は正体が不明だったが、その後に恐竜の化石だと判明した。すると、和尚が「他にも骨が出てくるから、もっと掘ってみなさい」と発掘調査を求めた。人々がその言葉を信じて掘ると、プイウェンゴサウルスを含む恐竜7体の化石700片が次々と見つかった。

 なぜこれだけの数の恐竜が完全に近い形で、まとまって見つかったのか。専門家たちは、ここが当時、河川だった可能性を指摘する。渡河中におぼれ死んだ恐竜が、川底の浅瀬の1カ所に流れ着き、土砂などの堆積物に埋もれてそのまま化石になったとの推論だ。

 発掘調査は現在も境内4カ所で続き、うち1カ所は見学できる。広さ700平方メートルを露天掘りしており、たくさんの恐竜が横たわったまま化石になっている姿は、日本ではなかなか見られない光景だ。訪れた日は休みで不在だったが、通常は7人の作業員が発掘に当たっている。観光客の目の前でも、世紀の大発見があるかもしれない。

観光客にも公開されている恐竜化石の発掘現場=カラシンのサッカワン寺院境内で

観光客にも公開されている恐竜化石の発掘現場=カラシンのサッカワン寺院境内で

 それにしても、専門家ではない和尚のひと言で発掘が進むのが、いかにもこの国らしい。案内をしてくれたタイ国政府観光庁日本市場アドバイザーの鹿野健太郎さんが「タイで僧侶は大変尊敬されています。寺院は学校や裁判所、集会所の役割を担っていました。今も人々に身近な存在です」と教えてくれた。

 仏教国として知られるタイ。化石の発見も、ひょっとしたら無縁仏になった恐竜が、何らかのパワーでハー和尚を導いたのか…? たぶん、そんなはずはないが、ここはほほ笑みの国アメージング・タイランドだ。不思議をそのまま楽しむのも面白い。

 文・写真 高瀬俊也

(2019年3月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
バンコクへはタイ国際航空で中部国際空港から毎日2便、羽田・成田空港から毎日計5便。
6時間半程度。
国内線に乗り換え、タイ東北部の中核都市コーンケーンへ約1時間、カラシンへ車でさらに約1時間。
現地移動はタクシーなどを1日チャーターするのが無難。

◆観光情報
タイ国政府観光庁ホームページに詳しい情報が掲載されている。

おすすめ

プレーワー

プレーワー
壮麗なもち米の城(ライスキャッスル)

壮麗なもち米の城(ライスキャッスル)

★シリントーン博物館
開館時間は午前9時~午後5時。
入館料は大人100バーツ(1バーツ=約3.6円)、子ども50バーツ。
月曜休館。

★プレーワー
北部のバーンポーン村は、幾何学模様を織り込む絹織物「プレーワー」が有名。
村の全ての女性が各家独自の模様を代々受け継ぎ、養蚕から機織りまでこなす。
1977年に来村したシリキット王妃(現王太后)が、じゅうたん代わりに敷かれたプレーワーの美しさに踏むのを固辞して手に取り、特産工芸とするよう村に提案した。
元来は民族服の肩掛け布だが、現在はショールやスカートなども生産。
高級品だが、村のショップでは手頃な価格の土産品もある。

★ワット・サウェッタワン・ワナラーム
東部のヌア村の寺院。
2月7~12日のお祭りでは壮麗なもち米の城(ライスキャッスル)が登場。
穂が付いたままの稲わらを100万本以上使い、村人7000人が2カ月以上かけて作る。
観光客も稲わら編みを体験できる。

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