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大砂丘と「山陰の松島」

大砂丘と「山陰の松島」 鳥取県 「雄大」「繊細」自然の妙

鳥取砂丘でSNS映えをねらって撮影する外国人観光客

鳥取砂丘でSNS映えをねらって撮影する外国人観光客

 日没の約1時間前に鳥取砂丘に着くと、この日本有数の面積を誇る大砂丘の上には、すでに日暮れ時の涼しい風が吹いていた。その日は晴天に恵まれ、砂丘から夕日を見ようと、観光客が残っていた。砂丘入り口から約400メートル離れた「馬の背」と呼ばれる標高47メートルの丘の上まで歩いた。周辺で一番高く見張らしがよい。人気のスポットだ。

 砂丘の上りはきつかったが、上に立つと、砂丘全体や日本海が見渡せ、気持ちがよかった。馬の背にいた観光客に話しかけてみると、中国、台湾からの人が多く、思い思いのポーズを取りながら、SNS映えをねらって撮影し合っていた。香港から家族で来たという30代の女性は靴を脱いで素足で散策中。「雄大な景色が素晴らしいし、足の裏の乾いた砂の感触が何とも言えない」と話した。馬の背を下り、入り口付近に戻った。

鳥取砂丘の日没。手前の馬の背の上に観光客のシルエットが浮かんだ=いずれも鳥取市で

鳥取砂丘の日没。手前の馬の背の上に観光客のシルエットが浮かんだ=いずれも鳥取市で

 そして、日没。丸い夕日が馬の背の向こうの海に沈んでいくと、それぞれの国・地域の言葉で歓声が上がった。馬の背の上に観光客のシルエットが浮かんだ。夕闇が広がると、海に20隻以上のいさり火が並び、これもまた壮観な光景だった。

 その日は鳥取市内に投宿し、翌日、同市の隣の岩美町にある浦富(うらどめ)海岸に向かった。「山陰の松島」と呼ばれ、大小の島が点在する、約15キロ続くリアス海岸だ。鳥取砂丘から浦富海岸へは「車で10分」と説明され、対照的な景観を持つ2つの海岸がこの距離にある。

 浦富海岸を知るには、網代漁港そばに乗り場がある島巡りの遊覧船がよいといわれ、「山陰松島遊覧」の定員95人の遊覧船に乗った。

 出航すると、まず「千貫松島(せんがんまつしま)」という高さ約10メートルの島というか岩が、目に飛び込んできた。中は空洞になっており、風と波が弱いときは12人乗りの小型遊覧船なら中を通り抜けることができるそうだ。その時はあいにく条件が整わず、欠航の表示が出ていた。

浦富海岸の千貫松島(上に松が1本生えている左手の島)。沖合を遊覧船が進む=鳥取県岩美町で

浦富海岸の千貫松島(上に松が1本生えている左手の島)。沖合を遊覧船が進む=鳥取県岩美町で

 遊覧船が海岸に沿って進むと、「岩燕(いわつばめ)洞門」「観音浦・西大島」や「鴨ケ磯(かもがいそ)海岸」「菜種五島」など奇岩、洞門、洞窟、入り江が次々と現れた。素潜り漁の漁師やマリンスポーツに興ずる人々の姿も。遠浅の海は透明度が高く、エメラルドグリーンに輝いていた。

 島巡りから戻って下船後、遊歩道を約15分歩き、千貫松島を見下ろす絶壁上の展望台に足を運んだ。青空、青い海に加えて、ちょうど遊覧船も見え、一幅の絵のよう。文豪の島崎藤村はここを訪れ、「松島は松島、浦富は浦富」と絶賛したそうだが、納得できた。

 帰り際、やはり同漁港にある「あじろカフェなだばた」に立ち寄った。なだばたとは地元の言葉で波打ち際のこと。同漁港はズワイガニ、アカガレイ、シロイカ、イワガキなど豊かな水揚げを誇る。店は一昨年、地域活性化のためオープン。地元の下根鈴江さん(70)ら60~70代の女性たちが切り盛りし、朝に水揚げされた魚介類を出す。

 アカガレイの煮魚定食を頼んだ。おまけで小さな煮サザエをつけてもらった。こんな小さなサザエは初めてなので、店の浜田すみ子さん(75)に聞いてみた。「漁師さんから『小さすぎて市場に出せない。有効に活用して』といただいたのです。ありがたいことです」。地域住民が店にかける思いが伝わってきて、煮魚がいっそうおいしくなった気がした。アゴ(トビウオ)の出汁(だし)がよくきいた、モズクとトビウオの子(魚卵)の吸い物も初めてだった。ここへ来たからこそ、味わえる一品だろう。

 大砂丘に山陰の松島、小さなお店、味わい深い旅になった。

 文・写真 草間俊介

(2019年月8月2日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
鳥取砂丘へは鳥取駅から、浦富海岸(遊覧船乗り場)へは鳥取駅か岩美駅(JR山陰線)からそれぞれバス、タクシーで。
名古屋方面から鳥取駅へは、新幹線の姫路駅か岡山駅で在来線特急に乗り換える。

◆問い合わせ 
鳥取市観光案内所=電0857(22)3318、山陰松島遊覧=電0857(73)1212。
料金、時間などはホームページで。

おすすめ

あじろカフェなだばた 煮魚定食

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★あじろカフェなだばた
カフェ午前9時~午後3時、ランチ午前11時~午後2時半(ラストオーダー)、火曜休み。
刺し身定食1000円、煮魚定食800円など。
電0857(72)8414

★天然イワガキ
鳥取県のシーズンは6~8月。
同県では長さ13センチ以上に「夏輝(なつき)」というラベルを付けている。
鳥取市の賀露港そばの「かねまさ・浜下商店」では1個250円から1600円のイワガキを販売、その場で味わうことができる。
電0857(28)2391

★山陰DCアフターキャンペーン「ノスタルジック山陰」
鳥取県、島根県とJR西日本などは9月30日まで、合同で観光キャンペーンを展開中。
JR西日本は「名探偵コナン」の作者が鳥取県出身であることにちなみ、コナンのイラスト列車をリニューアル、県内などで走らせている。
キャンペーンの詳細はホームページで。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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