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釧路湿原から知床半島へ

釧路湿原から知床半島へ 北海道 空と大地 はてしなく

夏でも神秘的な姿を見せる摩周湖=北海道弟子屈町で

夏でも神秘的な姿を見せる摩周湖=北海道弟子屈町で

 「道東」(北海道東部)の風は、猛暑の本州と違って爽やかだった。穏やかな日差しが、この旅が1泊2日の強行軍であることを、しばし忘れさせてくれた。

 鉄道やバスに乗って、晩夏の釧路湿原から摩周湖、知床半島などの自然をたっぷりと観察する旅程。最初は、釧路駅から釧路湿原沿いの雄大な風景を見渡すことのできる、JR釧網線の観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」に乗って塘路(とうろ)駅(標茶(しべちゃ)町)を目指した。

 釧路駅からは1時間弱。窓が開いたまま、風が気持ち良く吹き込む車窓に広がるのは、国際的に重要な湿地の保全を目的としたラムサール条約に日本で最初に登録されたという、手付かずの自然の原風景だ。線路と並行する釧路川では、カヌーを楽しむ人たちが、ノロッコ号に乗る家族連れに満面の笑みで手を振ってくれる。

 さらに知床を目指して北へ向かおう。途中、摩周湖で有名な弟子屈(てしかが)町に立ち寄った。

緑の大地と青空がどこまでも広がる渡辺体験牧場=弟子屈町で

緑の大地と青空がどこまでも広がる渡辺体験牧場=弟子屈町で

 その日は好天に恵まれ、摩周湖の展望台に立つと、湖面に青空と周囲の山々が映り込んでいた。透明度の高い湖水は青以外の反射は少ないといわれ、湖面の色は「摩周ブルー」と称される。魅力の片鱗(へんりん)を見ることができた。近くの体験型の牧場にも足を運んだ。乳牛たちがのんびりとたたずむ草原、背後にそびえる山並みと、澄み切った青空のコントラストに感動した。都会では決して実感できない空の広さ、大地の広さが北海道にはある。

 移動のバスの車内からは、タンチョウヅルが羽を休める姿を至る所で見ることができた。北海道のタンチョウが渡り鳥でないことも、この地に来て初めて知った。その日の夕方に知床半島西側の旅の拠点・斜里町のウトロ温泉に着いた。

 翌日、知床半島の沿岸を巡る観光船に、同温泉近くのウトロ港から乗船した。人懐っこいカモメたちが乗客を歓迎するかのように船に降り立ち、翼をばたつかせながら愛嬌(あいきょう)を振りまいてくれた。

 港に戻って観光船から岸に降り立つと、名曲「知床旅情」の歌詞を刻んだ石碑がひっそりと立っているのに気づいた。歌詞の一節を目にして、この地が北方領土と目と鼻の先であることを実感させられた。

断崖から激しく落ちる水流が迫力満点の「オシンコシンの滝」=斜里町で

断崖から激しく落ちる水流が迫力満点の「オシンコシンの滝」=斜里町で

 「オシンコシンの滝」のスケールの大きさは予想以上だった。標高約70メートル、落差約50メートルの断崖から、しぶきを上げながら落ちていく水は白みが強く、水流が二筋に分かれることから「双美の滝」とも称され、力強さと美しさを兼ね備えている。

 滝の前は、オホーツク海や知床連山の眺めを楽しめることもあって、観光客の姿が絶えない。滝のしぶきが、清涼感たっぷりの天然のミストシャワーとなって、旅情をさらに高めてくれた。

 斜里町から再び釧網線に乗車するなどして、海岸線の絶景を楽しみながら移動した。旅程の最後は、北東部の拠点都市・北見市に降り立った。

 夕食は、国内で初めて地ビール製造の免許を取得したという「オホーツクビール」が市中心部で営業する「オホーツクビアファクトリー」で、ビールの飲み比べに興じた。色や味の濃淡が違う地ビールはどれも口当たりが良く、味比べで一口ずつ飲むたびに、旅の疲れを吹き飛ばしてくれるような潤いと心地良さが体中に染み渡っていった。

 文・写真 中根政人

(2019年9月13日 夕刊)

メモ

◆交通
釧路へは羽田空港から直行便で、中部国際空港から新千歳空港経由でたんちょう釧路空港へ。
知床(斜里町)へは羽田空港、中部国際空港から女満別(めまんべつ)空港へ。
同空港からバスでJR網走駅に出て、JRに乗り換えて知床斜里駅下車。

◆問い合わせ
観光サイト「GoodDay北海道」など参照。

おすすめ

ノロッコ号から見た景色

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オホーツク北見塩やきそば

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★「くしろ湿原ノロッコ号」
釧路-塘路間を今月23日までは1日2往復。
24日からは1往復。
片道540円(指定席はプラス520円)。
詳細はJR北海道の公式ホームページで。
写真はノロッコ号から見た景色。

★渡辺体験牧場
弟子屈町の体験型牧場。
乳牛の乳搾りや餌やり、トラクター乗車などができる。
受付時間は午前9時半~午後3時半。
不定休。
電015(482)5184

★オホーツクビアファクトリー
オホーツクビールが北見市中心部で運営。
「ピルスナー」「エール」「ヴァイツェン」「マイルドスタウト」など色も風味も違うビールの飲み比べができる。
ご当地グルメ「オホーツク北見塩やきそば」などもお薦め。
午前11時半~午後10時(ラストオーダーは9時半)。
年末年始は休み。
電0157(23)6300

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。