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観光列車「海里」デビュー

観光列車「海里」デビュー 酒田(山形県)-新潟 食と景観 ゆったり満喫

羽黒山五重塔の前でほら貝を吹く吉住謙佑さん=山形県鶴岡市で

羽黒山五重塔の前でほら貝を吹く吉住謙佑さん=山形県鶴岡市で

 「新潟・庄内の食と景観を楽しむ列車」と銘打った、JR東日本の新しい観光列車「海里(かいり)」が10月5日、新潟-酒田駅(山形県酒田市)間にデビューする。デビュー前に、酒田駅から新潟駅までの訓練運転が行われ、取材した。

 酒田市、鶴岡市など庄内地方(同県の沿岸地域)は見どころが多い。この取材の機会を利用して前日に鶴岡市に入り、約1300年の歴史があるというあつみ温泉に投宿した。翌日、修験道で有名な羽黒山を訪れた。

 羽黒山は入り口の随神門から山頂の三神合祭殿(さんじんごうさいでん)まで約1.7キロにわたり杉並木の参道が続いている。杉は樹齢300~500年の巨木ばかり。山伏の吉住謙佑さん(30)の案内で参道を進むと、うっそうとした森の中に高さ約29メートルの国宝・羽黒山五重塔が姿を現した。

 色彩は施されず華やかさはないものの、かえって修行の場にふさわしいたたずまいだ。吉住さんがほら貝を吹くたびに、参拝客のカメラ、スマートフォンが向けられた。

 クラゲで有名な鶴岡市立加茂水族館にも足を運んだ。1万匹のミズクラゲが遊ぶ直径5メートルの大水槽は大人気。老若男女が「癒やされる」と口にしながら、スマホで撮影していた。

 酒田市へ移動し、NHKの連続テレビ小説「おしん」で知られる、米を保管する山居(さんきょ)倉庫を見て回った。

デビューを待つ海里のスタッフたち=山形県酒田市で

デビューを待つ海里のスタッフたち=山形県酒田市で

 さあ、訓練運転だ。午後3時前に酒田駅に入ると、夕日と新雪をイメージしたオレンジと白の4両編成の海里が出発を待っていた。既存車両の改装ではなく、新造のピカピカのボディーだ。車内を一回りして、最初に思ったのは「ゆったり感」だ。

 1号車はリクライニングシート30席。席の前後に1.2メートルの距離があり、足が伸ばせる。

 2号車は1室4人のコンパートメントが8室の32席。

 3号車は売店、イベントスペースなどで、座席はない。

 4号車は食事提供を前提に設計され、動く展望レストランだ。4人掛け、2人掛けのテーブル席、外側を向いたペアシート席があり合計24席。
 
 

笹川流れを車窓に見ながらの海里4号車の食事(訓練運転なので、新潟発酒田行きの食事が出ている)=新潟県村上市で

笹川流れを車窓に見ながらの海里4号車の食事(訓練運転なので、新潟発酒田行きの食事が出ている)=新潟県村上市で

 食事の一部は月ごとに変更され、10月は酒田発は鶴岡市の人気のイタリアン「アル・ケッチァーノ」、新潟発は新潟市の老舗料亭「行形亭(いきなりや)」がそれぞれ監修した。食事は4号車の乗客のみ。1、2号車の乗客には特製弁当(有料、要予約)が設定されている。

 午後3時2分、発車。最初は日本有数の米どころである庄内平野の真っただ中を走る。車窓に稲刈り前の黄金色に輝く田んぼが広がった。あつみ温泉駅から桑川駅(新潟県村上市)までは、日本海沿いを走り、ほぼ海を見ながら進む。

 特に、桑川駅までの10キロ余の奇岩が連なる国の天然記念物「笹川(ささがわ)流れ」では、速度を落としてくれるため、車窓からたっぷりと楽しめた。桑川駅は目の前が海で、約30分間停車。下車して浜辺で海を眺めた。

 午後6時31分に新潟駅に到着。酒田-新潟は特急で2時間十分余だが、食事と景観が楽しめるように、停車時間を含め3時間半近くをかけている。

 庄内観光コンベンション協会の五十嵐敦さん(51)は「観光の起爆剤として海里に期待している」と話していた。他の停車駅でも、飾りなど乗客を迎える準備が進んでいた。

 ところで、新潟-酒田は電化区間だが、海里はディーゼルエンジンで発電した電気と、蓄電池に充電した電気で走るハイブリッド式を採用している。非電化区間でも走ることができ、東北や北海道など、非電化区間の地方ローカル線を、地域の期待を担って走る日も来るのだろう。

 文・写真 草間俊介

(2019年9月27日 夕刊)

メモ

◆交通
新潟駅までは上越新幹線で。
名古屋方面からは県営名古屋空港、中部国際空港から新潟空港まで定期便が飛んでいる。

◆問い合わせ
羽黒山については羽黒町観光協会=電0235(62)4727
鶴岡市立加茂水族館=電0235(33)3036

おすすめ

海里

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あつみ温泉の共同浴場 「下の湯」

あつみ温泉の共同浴場 「下の湯」

★海里
10月5日から土日祝日を中心に1日1往復運行。
全車指定席。
1、2号車は乗車券に座席指定券(840円)を購入する。
4号車は首都圏発、新潟発などの旅行商品のみの販売。
運転日、時刻表など詳細はJR東日本のホームページの「海里」で。
4号車の旅行商品の問い合わせはびゅう予約センター=電(0570)048928=へ。

★羽黒山五重塔の特別拝観
11月30日まで1、2階の内部を公開中。
心柱を見ることができる。
午前8時半~午後4時半、拝観料500円。
また、10月27日までの土日祝日の午後5時半~8時半(受け付けは同8時まで)、塔をライトアップ中。
夜間参拝協力金500円。

★あつみ温泉の共同浴場
宿泊客以外も入れる「下の湯」など3カ所がある。
下の湯は自治会が運営、外来者は協力金200円で入浴できる。
午前6時~9時半、正午~午後11時。
あつみ観光協会=電0235(43)3547

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。