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【三重】宣長と師弟の絆に光 松阪、記念館で企画展

ジャンル・エリア : 三重 | 展示 | 文化 | 歴史  2019年04月11日

宣長の人脈が分かる資料が並ぶ展示=松阪市の本居宣長記念館で

宣長の人脈が分かる資料が並ぶ展示=松阪市の本居宣長記念館で

 松阪出身の江戸時代の国学者、本居宣長の人脈に光を当てた企画展「パール・ネットワーク-慶(よろこ)びの円居(まどい)」が、松阪市殿町の宣長記念館で開かれている。恩師や弟子たちと積極的に交流し、互いに刺激を与え合った宣長。企画の担当者は「宣長には、関わった人と自分の人生を真珠のように輝かせる交流があった」と話す。6月9日まで。

 宣長は対話を大切にして研究を大成させた。医学を学ぶために23歳で京都に出た際は、儒者の堀景山の家に住んで儒学の手ほどきを受け、34歳の時に松阪で出会った国学者の賀茂真淵とは師弟関係を結んで古典の教えを受けた。企画展ではこうした出会いや、歌会、講釈で親交を深めた門人など、幅広い人脈を示す書籍や掛け軸など170点が並ぶ。

 景山の教えがメモされた宣長愛用の中国の歴史書「春秋左氏伝」には、白塗りの修正跡も残り、熟考を重ねた様子がうかがえる。京都に滞在中、友人と劇を鑑賞し歌を楽しんだことが記された「在京日記」からは、青春時代の交友関係が分かる。

 国内最古の歌集「万葉集」の記述の解釈について真淵に送った質問状や、宣長が自著「古事記伝」を出版する際、家族や門人と版下を分筆したことを記した覚書は、偉業の背景に多くの人の支えがあったことを物語っている。

 宣長の書斎「鈴屋(すずのや)」は歌や研究の仲間が一つの所に集う「円居」の場だった。「鈴屋円居の図」には、平安貴族の仮装をして仲間と歌を楽しむ姿が描かれている。

 宣長の影響を受けた人々も紹介。熊本から何度も宣長を訪ねては著書を書き写した神官の帆足長秋の写本もある。宣長は出会った人の名前や住所を記録してあり、松坂城を築いた蒲生氏郷の子孫の儒者、蒲生君平など300人の名が残されている。記念館の担当者は「今のように連絡手段が発達していない時代には、情報を得るために自分で足を運ばなければならず、人脈が大切だった」と話す。

 記念館では現在、宣長が愛用した「万葉集」(重要文化財)を公開中で、新元号の出典「梅花の歌三十二首序」を見られる。

 (水谷元海)