ジャンル・エリア : 展示 | 工芸品 | 文化 | 福井 2020年02月27日
坂井市三国町の製糸・織物職人、嘉村亜紀子さん(43)が100年以上前に滅びた県伝統の絹織物「奉書紬」の技法で織り上げたストールを来月、自らのアトリエで販売する。嘉村さんは「昔からずっと使われてきた素材の美しさを感じてもらいたい」と話す。
奉書紬は江戸時代初頭に福井で生まれた絹織物。紋付きや法衣として重用されたが、明治時代に誕生した羽二重に取って代わられたという。織物職人として働いた経験があった嘉村さんは、3年前に三国町にアトリエを構えた。県内唯一の養蚕農家、杉本脩さんから「玉小石」という希少な繭を譲り受け、奉書紬を復活させた。
1日に取れる糸はわずか100グラムで、節があるため、絡まりやすく、1日で織ることができるのは最大20センチほどでしかない。着物や帯をつくることも考えたが、「より身近で、肌触りの良さを感じることができるものを」とストールづくりを選んだ。素材の柔らかさを最大限生かすため、糸は空気を含みやすい単糸のみを使い、布に立体感が出るようこだわった。試作を重ね、3年かけて完成させた。
ストールは紫に近い紫根や藍、赤に近い茜など6種類の色を準備。横浜市に住む草木染職人に依頼して染めてもらった。異なる色の糸を組み合わせるセミオーダーも受け付けている。
嘉村さんは「人が見向きもしなくなった物でも、輝く方法でアプローチすれば素晴らしさが伝わるはず。手作業でしか出せない独特の風合いをぜひ感じてほしい」と話す。
展示販売会は3月20~22日の午前10時~午後4時半、坂井市三国町北本町3の3の32のアトリエで。ストールのほか、桑の葉のお茶や小物なども販売する。新型コロナウイルスによる肺炎の今後の影響次第では、中止や延期も検討する。詳細はアトリエのフェイスブックより。
(波多野智月)