ジャンル・エリア : 三重 | 展示 | 芸術 2023年04月27日
百五銀行の元頭取で、陶芸家としても知られる川喜田半泥子(1878~1963年)が、100年前に長男の壮太郎(1904~72年)と欧米を旅行した記録をたどる展示「川喜田半泥子が見た欧米−大正時代の海外旅行−」が、津市垂水の石水博物館で開かれている。6月18日まで。 (鎌倉優太)
芸術家志向で、当時大学生の壮太郎が欧米を視察したいとの思いに応え、半泥子は1923年の3~9月に、欧米など12カ国を一緒に旅した。会場には、半泥子が軽快なタッチで描いた大量の水彩スケッチの中から108点を展示。大正時代の欧米の雰囲気を感じ取ることができる。
半泥子が旅先で購入した品々も並ぶ。当時、パリの画壇で活躍していたマチスやボナール、ロンドンで筆を振るっていた栗原忠二の絵画など貴重な作品がある。ロンドンで家具など約2000万円分を購入した際の領収書も残っており、半泥子のきちょうめんな一面をうかがわせる。
日記に書かれていた「旅の恥はかき捨てならず」という一文も紹介。龍泉寺由佳・学芸課長によると、「旅先の恥は旅先でしかぬぐえないと考えていた。半泥子が日本人としての誇りを持って行動していたことが分かる」という。半泥子は帰国後に陶芸の道に傾倒しており、「海外の芸術に触れ、改めて日本文化の素晴らしさを発見した」と旅が与えた影響を解説した。
同館では5月28日午後2時〜3時半、「川喜田半泥子が見た100年前のパリ画壇」と題して無料の記念講演を実施する。(問)石水博物館=059(227)5677