ジャンル・エリア : 展示 | 愛知 | 芸術 2023年12月20日
油彩と刺しゅうを組み合わせた絵画表現を手がける名古屋市名東区の佐藤香菜さん(40)の個展「循環する時間」が、同区社が丘1のギャラリーIDFで開かれている。24日まで。
動物をモチーフに、死生観を映した空想的な描写が目を引く。横3.3メートル、縦1.9メートルの大作「穴」は、胎児らしき象の体から根が幾つも伸び、所々に赤い花の芽、刺しゅうで表したコケが生える。抽象化した黒い背景の中に、象は白く輝くように描かれ、まるで穴に葬られ、土に返るよう。
鹿を題材にした「融解」は、角が木に化け、丁寧に刺しゅうしたアネモネやプロテアの花が鮮やかに咲く。花は溶けだしているかのように、刺しゅうの糸がおびただしく画面に垂れる。
出展は8点。刺しゅうの糸は、流れ落ちる血や地中に深く伸びる根の表象としてキャンバスからはるかにはみ出した作品もある。
沖縄県立芸術大を卒業し、若手作家の登竜門とされるシェル美術賞展で審査員賞を得るなど注目を浴びる。佐藤さんは「私の作品は、内的世界と現実世界をつなぐ中間領域。そこでは命が循環し、生成と衰退を繰り返しています」と解説した。火曜休み。
(小島哲男)