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【富山】千年も海中に眠る森林 将棋取材の合間に 富山県魚津市

ジャンル・エリア : グルメ | 富山 | 展示 | 自然  2024年02月29日

港のすぐ近くに立つ魚津埋没林博物館 

港のすぐ近くに立つ魚津埋没林博物館 

 吾輩(わがはい)は将棋担当記者である。昭和に無敵を誇った故大山康晴15世名人とは何のゆかりもないが、藤井聡太八冠(21)を追いかけ全国を飛び回っている-。というわけで、第49期棋王戦5番勝負第1局が指された4日は、対局地の富山県魚津市にいた。

 たとえ形勢が悪くとも、おやつが出る午後3時までは降参しないのがタイトル戦の様式美。午前中は時間に余裕があるので、街中を歩くことにした。そういえば、前夜祭で挑戦者の伊藤匠七段(21)は「魚津では春に蜃気楼(しんきろう)が見えると聞いている」、藤井八冠は「魚津埋没林を見に行きたい」と話していた。この二つを一度に学べる「魚津埋没林博物館」を目指した。

 埋没林とは、森林が土砂に埋まったまま残されたもので、過去からの環境変化を知る貴重な資料。魚津埋没林は1930年に魚津港建設工事で、砂浜を掘削して見つかった。千年以上も海底に埋まっていたが、地中から湧き出す豊富な真水のおかげで腐敗せず残っていたという。

水中に沈んだスギの根。プールの脇の窓から、間近に見ることができる 

水中に沈んだスギの根。プールの脇の窓から、間近に見ることができる 

 発掘現場をそのまま利用した「水中展示館」。底から湧いたり、くみ上げたりした地下水で満たされたプールには、端から端まで10メートルもの長さのスギの根が沈む。養分を求め、あちらこちらに枝分かれしながら伸びた根は、まさに威容。枯れてからどれだけの時間がたっているのだろうか。水中でゆらめく姿に、生命の神秘を感じる。元日の能登半島地震では、水底の砂が舞い上がり、訪問時も普段より濁っていたという。それでもきれいな水だ。

 この博物館のもう一つの目玉が、蜃気楼。大気の温度によって光が屈折し、富山湾の対岸の景色が伸び上がったり、反転したりして見えるそう。館内には蜃気楼再現装置など、仕組みを分かりやすく説明するコーナーもたくさんある。本当に見えるのかな。外に出て、カメラの望遠レンズを使って目をこらすが…よく分からなかった。

 将棋の取材の前に、腹ごしらえだ。博物館から歩いて数分、海の駅「蜃気楼」内のレストラン喜見城で看板メニューの喜見城丼(3200円)を注文。すぐ隣の魚津港で水揚げされた新鮮な刺身が10種類近く盛られている。魚は日替わりで、今回は白エビ、タイ、ブリ、カニなどがたっぷり。魚介はもちろんだが、何よりもご飯がおいしい。炊いている水が良いからだろう。あっという間に平らげてしまった。

 さて、肝心の対局は、まさかの持将棋(引き分け)という想定外の結末で、まさに「勝負は水物」。水に恵まれた魚津らしい決着だったのかもしれない。(大山弘)

 ▼ガイド 魚津埋没林博物館は、あいの風とやま鉄道魚津駅、富山地方鉄道新魚津駅から徒歩20分、タクシー5分。高校生以上640円。小中学生は平日260円、土日祝日無料。3月15日までは木曜休館、11月末まで無休。午前9時~午後5時。(電)0765(22)1049。海の駅「蜃気楼」はレストランの他、鮮魚の直売コーナーも。第2水曜定休。(電)0765(24)4301

喜見城丼=いずれも富山県魚津市で

喜見城丼=いずれも富山県魚津市で

(中日新聞夕刊 2024年2月29日掲載)