ヴィシェフラッドのキュビスム建築
2008年4月21日
ヴィシェフラッドは、チェコ建国にまつわる伝説の王妃リブシェが君臨した城があったといわれ、不思議な雰囲気が漂っています。この一角、ヴルタヴァ川の河畔近くに奇妙なかたちが目を引く一軒のヴィラ(邸宅)があります。
ヨゼフ・ホホール(1880-1956)という建築家が設計したこの建物は、キュビスム様式と名付けられています(1912-13年に建てられました)。このキュビスム様式の建築はチェコにしかないとされています。
キュビスムといえば、画家のピカソやブラックの絵画がよく知られています。ピカソによる〈アヴィニョンの娘たち〉(1907年)がそのはじまりとするのが通説です。
キュビスムはもののかたちを面でとらえていき、それを再構成してまとめています。建築の場合、絵画とはニュアンスがだいぶ異なると思われますが、面の処理が非常に興味深いです。
単に奇をてらった建築というわけではなく、綿密に設計されているからこそ、現代の目で見ても強いインパクトがあるのでしょう。正面や背面の印象がちがいや、フェンスなどのディテールもまたおもしろいところです。
- 増田 幸弘
1963年東京生まれ
スロヴァキアの都・ブラチスラヴァ在住のフリー記者。
ヨーロッパ各地を取材しながら、日本でも取材。新聞・雑誌に特集記事や連載記事を執筆している。
「プラハのシュタイナー学校」(白水社)や「プラハ カフカの生きた街」(パルコ出版)などの著作がある。