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プノンペン 生きて伝える大切さ

2009年11月20日

 カンボジアの首都プノンペンにあるトゥールスレン歴史博物館を二年ぶりに訪ねた。同館は、ポル・ポト政権下で約一万七千人が虐殺された元政治犯収容所を保存し、当時の惨劇を今に伝える。その一角でチュン・マイさん(79)とも二年ぶりに再会した。

 チュンさんは現在数人とされる収監された人の生き残りで、一昨年秋に取材した。黄ばんだ白いシャツに色あせた黒いズボン。拷問のすさまじさを興奮気味に語り「死を考えない日はなかった。今もなぜ捕まったのか分からない」と鋭く、暗い目つきで訴えた。

 再会したチュンさんはこざっぱりした身なりで、手にはスケジュール帳を持っていた。聞けば、昨年から語り部として同館を訪れる内外の人に、あの時代を伝えているという。「毎日が充実しているよ」と話す目は、どこか優しげだった。

 収監の理由は永遠に謎かもしれないが、生かされたわけは見つかったのかもしれない。 (林浩樹)

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