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香港 当時を残す街の風情

2010年01月19日

 九竜半島と香港島を結ぶスターフェリーに久々に乗ってみたくなった。

 所々、錆(さ)びて緑色のペンキがはがれた鉄箱の券売機に、2.3香港ドル(約28円)をちゃりんと入れると、ガラガラとプラスチック製のコインが出てくる。昼下がりの海風に吹かれながら、使い古して黒光りする木製長いすに腰を下ろすと、20年前の記憶が蘇(よみがえ)った。

 天安門事件前夜の1989年3月。人民服と自転車と砂ぼこりの中国大陸を1カ月半かけて放浪し、たどり着いた香港。洗練されたイギリス領の香りと、香港映画そのままの湯気が立つ汚い路地が、大学1年生の心を揺さぶった。

 猥雑(わいざつ)さは薄れた。エスカレーターでは一列に並び、東京とあまり変わらなくなった。でも、フェリーをはじめ街並みの風情はあまり変わらない。強権的な都市開発で昔の面影を失った北京の前門商店街や、西安の中心地を見ると少し寂しくなる。 (安藤淳)

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