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モスクワ 変革より酒の恨み?

2011年04月26日

 「この国に自由と民主化をもたらしてくれた。尊敬している」。ロシア人の40代の知人女性はこう言う。一方、50代の知人男性は「最低の政治家。彼がいなければロシアはもっと発展していた」と手厳しい。

 今月2日、80歳の誕生日を迎えたゴルバチョフ元ソ連大統領。ロシアでは民主化の旗手として評価する半面、ソ連を崩壊に導いた責任者との批判もよく耳にする。

 ソ連への懐古主義が根強く残っている証拠、と思っていたが、実はそればかりでもないらしい。

 各種世論調査などでゴルバチョフ氏の代表的政策として多くの人が真っ先に挙げるのは「節酒対策」だ。

 1980年代半ばに同氏が取り組んだ反アルコールキャンペーンは密造酒の横行や、粗悪品の飲酒による健康被害の増大を招き、大失敗に終わった。前述の知人男性は近所のスーパーからウオツカが消えた光景を今も覚えているそうだ。

 思えば以前、こんなアネクドート(小話)を聞いたことがある。

 酒店の行列に待ちくたびれた男が「ゴルバチョフをぶっ殺す」と叫んで駆けだした。が、すぐに戻ってこう言った。「あっちの行列の方が長かったよ」

 ロシアは1人当たりアルコール消費量が世界有数の飲酒大国。酒の恨みは恐ろしい。 (酒井和人)