2011年06月29日
「単身赴任? それならカモメのパパですね」。そう言われた。韓国第2の都市は港町の釜山。カモメが有名だ。ソウルの本社から転勤で単身赴任する会社員を指す造語として生まれたらしい。
家族関係が濃密な韓国。単身赴任は日本よりも「なぜ?」と関心をひく。「理解できない」といぶかられる場合もある。
キロギ・アッパ(雁(がん)のパパ)という造語もあると知った。教育熱の高い韓国から英語習得のために米国などに妻子を移住させ、月数十万円の仕送りをする父親を指す。たまに渡り鳥のように会いに行く。雁は夫婦愛が強く、家族に献身的との印象もあるようだ。
「鷲(わし)のパパ」は経済力がありいつでも飛んでいける父親。「ペンギンのパパ」は逆で、苦労で背中が曲がり飛んでいけない父親だと教えてもらった。
夜の席で隣席の男性が釜山からソウルに来た「逆カモメのパパ」だった。学生街の下宿に住み生活費を切り詰めているとか。私が「家族との連絡は週に1回程度」と話して驚かれた。「僕なんか娘から毎日5通はメールが届く」と画面を見せられた。「パパ、愛してるよ」の文字。いわく「カモメのパパはこれぐらいのメールをもらっているはずだ」。彼我の差は、父親の甲斐性(かいしょう)の差ではなく、日韓の違いと思うことにした。 (辻渕智之)