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ソウル コーヒーは甘くない

2011年07月21日

 喫茶店のコーヒー1杯が昼食代と変わらない約400円。それが今のソウルだ。客で多いのは女子大生や若いOLら。みな金持ちなのか。聞けば「友人と来て数時間は話すから。場所代と思えば高くない」。どの国も女性は会話好きなのだ。

 一方で「みそ女」という造語を聞いた。昼はテンジャンチゲ(みそ鍋)で安く済ませ、おしゃれなカフェで高いコーヒーを飲む女子大生を指す。「男におごらせるのも手」らしい。どの国も男女の関係は同じなのだ。

 先日、ソウルで年々高騰する大学の学費値下げを訴えるデモ集会があった。5000人余の参加者で目立ったのは、喫茶店から抜け出してきたような女子大生たち。彼女らがサンドイッチやジュースを口にしつつ野党政治家の演説を聞く姿は一見、ピクニックのようでもあった。だが取材すると、長期休暇に週5、6日アルバイトして学費を工面する現実を送っているという。

 彼女らは「カフェラテ効果」という言葉も使う。カフェラテを1日1杯我慢すれば、老後の約40年後には600万円近くたまるとの倹約の勧めだ。新卒の就職率が51%と深刻な先行き不安を象徴する言葉に思える。韓国の人は概して苦くない甘いコーヒーを好むが、彼女らが決して楽にコーヒーを飲んでいるわけではないと知った。 (辻渕智之)