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ロンドン 差さぬ紳士の心意気

2012年04月20日

 「春雨じゃ、ぬれてまいろう」。少し暖かくなってきたこの季節、日本なら雨の中、あえて傘を差さずに歩くことは春の風情を楽しむものだが、英国ではまったく意味が違う。

 「雨が降っているなんて、取るに足りないことは気にしない」。そんな感じで、タフガイぶりをさりげなく示すのだという。確かに、ロンドンの街角を闊歩(かっぽ)する男たちの姿を見ても、雨を楽しもう、味わおうといった「粋」な感じはない。

 むしろ、明らかに「あるはず」のものを、「ないもの」として無視して歩く。日本の春雨が「友」なら、英国にとっての雨は「敵」なのだ。

 さらに言うなら、折り畳み傘を持っているということ自体が格好悪いらしい。「雨が降ったらどうしようと、いつもびくびくしている」。本人に意図がなくても、そんな小心さを示す証拠として見られてしまうそうだ。

 だから、特に若い男は傘を持たず、ぬれて歩くことは「日常」そのもの。風情を楽しむために時としてぬれてみる日本の「非日常」とは大きく違う。

 ある日本好きのロンドンっ子が打ち明けた。東京の地下鉄出口で誰もかれもが立ち止まっては、傘を開く光景を見ると、いつもこう実感するという。「今まさに、おれは日本にいるんだ」と。 (有賀信彦)

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