【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. 中国
  5. 北京 絵本で防疫対策称賛

北京 絵本で防疫対策称賛

2021年03月10日

 北京中心部の大型書店に行く用事があり、ついでに中国紙が以前報じた絵本を探した。新型コロナウイルス対策が題材だったが、題名を忘れてしまった。

 幼児書コーナーを見て回ると、まず目に入ったのは知能開発や故事成語など教育熱心な中国らしいものだ。動物や宇宙など科学がテーマの本も少なくない。次に多いのは、ディズニーやきかんしゃトーマス、アンパンマンなどの本だ。中国独自のキャラクターは少数派だ。最後にたどり着いた絵本のコーナーでは、五味太郎さんなど日本の絵本の翻訳ものも人気のようだ。

 本棚の隅でようやく目的の本を見つけた。題名は「パパの帰りを待ちながら」。新型コロナのため家に帰れなくなった医師の父を待つ子どもの話だが、実はこの本は台湾で発行を試みて「中国当局のプロパガンダだ」と批判を浴びた。確かに市井の人々の犠牲を美化する中国式防疫を称賛する内容ともとれる。

 だが書店での扱われ方からみて、当局は国内ではこの本を通じた「プロパガンダ」に熱心ではないようだ。ちなみに北京のほとんどの書店では、1階の最も目立つ場所に習近平(しゅうきんぺい)国家主席の著書が並ぶ。 (中沢穣)