2022年05月12日
黒海に面したウクライナのオデッサは、帝政ロシア期の残り香が漂う港町。ロシア語を母語とする住民が多く、道端でも商店でも、ほぼロシア語しか聞こえない。ロシアの体制下で栄えた歴史があるからだろう。「大ロシア主義」の市民にも少なからず出くわした。
銃器店で働くキリルさん(49)もその1人。その頃、話題だったロシア軍の侵攻説について聞くと、「戦争はさすがにあり得ないが、元をたどればウクライナの東半分はロシアみたいなものさ」と笑っていた。
キリルさんの父はベラルーシ人、母はウクライナ人だが「ロシアこそが旧ソ連諸国を束ねる盟主」と信じている。ウクライナ人の女性(72)も「ロシアは決して他国を侵略しない。ロシアとはすなわち正義だ」と熱心に語っていた。
でも2月24日、ロシアのプーチン大統領の命令で侵攻が始まった。オデッサにもミサイルが撃ち込まれた。20人以上が死んだ。ロシアを信じてきた人々が街から逃げ出している。
キリルさんたちも現実に戸惑い、悲しんでいるだろう。オデッサのニュースを目にすると胸がふさがる。