ジャンル・エリア : 山 | 特産 | 神社・仏閣 | 近畿 2022年04月07日
JR奈良駅から南へと向かう列車に乗り込んだ。20分ほどがたっただろうか。
田園や住宅が見える車窓に、巨大な鳥居が出現。今回の目的地・大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市)が近い。
三輪駅で下車し、まずは大鳥居を目指す。案内看板もあるが、家々の屋根の上に見えるのだから迷う心配はない。1986(昭和61)年完成の大鳥居は高さ32.2メートル、柱と柱の間は23メートル。柱を支える基礎部分さえ、私の背丈より高い。周囲に高い建物がなく、威容がなおさら際立つ。
この大鳥居の下を通る道路の向こうに、きれいな円すい形の山が見える。三輪山だ。日本最古の神社とされる大神神社には本殿がなく、三輪山そのものをご神体としてまつる。参拝者は拝殿を通して、山を拝むのが習わしだ。
大鳥居をくぐり、境内へ足を運ぶ。酒造りの神としても知られる。私も「いつまでも元気に大酒を飲めますように」な個人的願望丸出しのお願いをしようかとも思っていたが、木立に囲まれた境内を歩いているうちに、厳粛な気持ちになってくる。いざ拝殿の前で手を合わせると「穏やかでありますように」との祈りが、自然と浮かんできた。
参拝を終え、駅近くの商店街をぶらつく。古来水に恵まれる三輪はそうめん発祥の地と言われており、「三輪そうめん」を売りにする飲食店が多い。レトロなたたずまいの喫茶店の店頭にも、パンケーキやパフェなどの食品サンプルの隣ににゅうめんのイミテーションが並んでいるほどだ。土産店で1袋を購入した。
なおも歩いていると、軒から下がる杉玉を見つけた。この地で1660年から酒を醸す今西酒造。この杉玉は大神神社からいただいたもので、「三輪明神・しるしの杉玉」の札が下がっている。仕込み水は、三輪山の伏流水。まろやかな味わいが特徴という。店内には「三諸杉」のラベルが貼られた瓶がずらり。同じ読みの「みむろ杉」銘柄が全国流通なのに対し、漢字の方は奈良県内限定のブランド。奈良県産酒米の「露葉風(つゆはかぜ)」を使った特別純米酒を買った。
帰宅後、ゆでたそうめんを熱々のだしに浮かべ、酒の封を切った。温めたそうめんはフワフワとした歯触りが楽しく、三諸杉は柔らかな口当たりで飽きが来ない。三輪山の恵みをたっぷり受けた食と酒は相性抜群。どちらもまろやかな味わいで、穏やかな気持ちになってくる。願いは通じたようだ。 (大山弘)
▼ガイド 大神神社へは、JR三輪駅から徒歩5分。自動車では、名阪国道天理東ICから約25分、西名阪自動車道天理ICから約30分。(電)0744(42)6633
(中日新聞夕刊 2022年4月7日掲載)