2022年07月08日
日曜の昼下がり、ロンドン市民の憩いの場ハイド・パークを訪れた。目当ては公園の北東角にあるスピーカーズ・コーナー。日曜午後に市民が集まり思い思いのテーマで討論する。古くはマルクスやレーニン、作家のジョージ・オーウェルらも熱弁を振るってきた歴史ある一角だ。
着くと、既にあちこちで人だかりができていた。テーマは宗教が多く、ロシアのウクライナ侵攻を巡る激論も。聴衆の表情もみな、真剣そのものだ。
台の上から演説する昔ながらのスタイルもあったが、大半は一対一での密着討論。かつ周囲には本格的な動画撮影の機材がたくさんセットアップされている。常連の男性に聞くと「相手を論破する様子を、ユーチューブで配信しているんだよ」とのこと。人気の討論者には万単位のファンがいるらしい。
別の常連の女性によると、以前は議論が熱してくると暴言や暴力もあったが、「動画撮影が増えたおかげで、だいぶ抑止力になっている」とのこと。
伝統の言論の自由の場を、今はネット上の目が見守っている。時代ごとに変化しながら存続してきたこの広場に、とても魅力を感じた。 (加藤美喜)